書評


1999年2月、「所沢の野菜はダイオキシンに汚染されている」というニュースが、テレビ朝日の報道番組『ニュースステーション』で報道された。そして、このニュースがキッカケで大騒動となり、所沢産の野菜は、一時、スーパーの売り場から消えた。そして、この騒動は意外な方向に向かっていく。「自分たちがこんなに苦労するのは、ダイオキシンを出している産廃屋がいるからだ!」と、怒りの矛先が産廃業者に向かっていったのだ。その結果、産廃処理業界大手の石坂産業も反対運動の激化で次々と取引業者から取引停止を言い渡され、絶体絶命の危機に追い込まれた。本書絶体絶命でも世界一愛される会社に変える! は、同社の社長である著者の石坂典子さんが、同社に対するバッシングの嵐の中から"脱・産廃屋"を目指して同社が歩んできた道のりを描いた本である。

著者の石坂典子さんはバッシング騒動の最中に"取締役社長"に就任した。以下の文章には、著者が社長に就任しようとしたときの想いが書かれている。この社長に就任する決意を表す文章を読むと、父の想いを受け取りながら、「会社を何とかしたい!」という根底にある強い想いを感じるのだ!

・50代不良社員達との戦いの結果、半年で社員が4割の減少
・15億円の焼却炉の廃炉と40億円も投資した「全天候型独立総合プラント」の導入
・業界に前例のない統合マネジメントシステムの取得
・3S(整理、整頓、清掃)とISOの同時導入
・12年間1日も欠かさずに行った「巡回指導報告書」のチェックと不満うごめく社員との格闘.....

これらのことを行った結果、社長就任後に社内は大きく変わった。しかし、"脱・産廃屋への道"は言葉に表すことが難しいほどの苦労の連続だと思う。特に「35~37歳は地獄の3年間であり、四季を感じない日々だった」と述べている。

そんな著者の心を変えたのは、とある料亭での「室礼との出会い」であり、「おもてなしの心」である。特に「おもてなしの心」について書かれた以下の文章は、「おもてなしとは何か?」を考える上で、十分な示唆を与えてくれる。


この「おもてなし」の考え方は、社員やお客様に対してのみならず、地域や地元の人たちに対しても貫かれている。

「地域の人たちへのおもてなし」は里山の再生であり、環境教育の拠点つくりであった。このような努力を重ねてきた結果、同社が整備する公園「くぬぎの森 花木園」には、きれいな水にしか棲まない「ゲンジボタル」や絶滅が危惧される「ニホンミツバチ」がいるようになった。また、工場には社会科見学の小学生で溢れるようになった。地域の人たちに愛され、信頼される産廃屋にならなければ石坂産業が永続企業になることはできない。そんな想いの結果が、このような形となって実を結んでいる。

ところで、著者は「所沢のジャンヌ・ダルク」と呼ばれているそうだが、次々と施策を打ち、社員を引っ張りながら"脱・産廃屋"を目指す姿は、まさにジャンヌ・ダルクだろう。そして、そんな著者の考え方やメッセージ、そして奮闘する姿は読む者に強い感銘を与える!なかなかめったにお目にかかれない強いインパクトを得る本を是非読んでいただきたいと思う。

※本書はダイヤモンド社・寺田さんより献本いただきました。



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目次

 はじめに 所沢「産廃銀座」を立て直した女 
 第1章 なぜ、職人肌の父は、30歳の娘へ社長を譲ったのか
 第2章 荒廃した現場で50代不良社員に立ち向かい、どうやって会社を変えたか
 第3章 「地獄の3年間」から「おもてなし経営」へシフトした瞬間
 第4章 東京ドーム3.5個分の8割が里山!2割が工場!見えないブランドをつくる「新・里山資本主義」
 第5章 どん底からでも利益を生み出す方法
 おわりに 世界中から人が集う会社へ
 
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