書評


時間の価値が変わってきている。

例えば、1990年代は数分の「すきま時間」に何かやろうと思っても、できることは限られていた。できたことといえば、せいぜいタバコを吸うことぐらいだろうか?ところが、今は携帯端末、SNSをはじめとした各種アプリケーションやサービスの発達により、ほんの数分の「すきま時間」の間に価値を生み出す活動ができるようになった。

本書『時間資本主義の到来』は、「かたまり時間」から「すきま時間」へという「時間価値」の概念で捉えながら、経済活動における変化について書かれた本である。

では、本書のタイトルとなっている「時間資本主義」とは何か?本書に書かれている以下の事例を読むと、イメージとして捉えることができると思う。

また、本書によると、企業が生み出すモノやサービスの価格にも「時間価値」が組み込まれているという。「時間価値」にも、「節約時間価値」「創造時間価値」の2種類がある。
  

これについては、飛行機および鉄道を考えると分かりやすい。

例えば、東京から広島へ行く場合、飛行機と鉄道を乗車時間で比較した場合、圧倒的に飛行機の方が短い。飛行機の場合、羽田から広島まで乗車時間は約1時間20分、新幹線の場合、東京駅から広島駅までは約3時間30分かかる。新幹線で3時間以上座っているのは苦痛なので、ひと昔は広島に行くとしたら飛行機を利用するのが一般的だった。 この場合、飛行機の利用で生み出される時間的価値は、「節約時間価値」と言える。

ところが、最近は変化が起きている。広島まで行くのに新幹線を利用する人が増えているのだ。理由は新幹線の中ではインターネットに接続ができるため、メールのチェックなど、ひと仕事が出来るのだ。飛行機の場合は離陸・着陸時にはパソコン等の端末を使用することはできないため、こうはいかない。そのため、近年では新幹線を利用してインターネットに接続しながらひと仕事をするビジネスマンが増えている。そういう意味において、新幹線の利用で生み出される時間的価値は「創造時間価値」と言える。

このような変化をもたらした最大の要因は、情報端末の発展インターネットの接続ポイントの増加である。そして、情報端末は小型され、今やスマホの利用が一般的となった。そして、スマホ向けのさまざまなアプリケーションやサービスが、今や数分間の「すきま時間」で「創造時間価値」を生み出すことが可能となっている。


「すきま時間」が「金」になる例をあげるとすると、インターネットを利用した株やFXなどの取引、Amazonなどのプラットフォームを利用した売買ビジネスなどがあげられる。株やFXの売買注文や、Amazonへの出品などは、スマホなどの携帯端末で数分あれば可能だ。このように、創造性を発揮して「すきま時間」をうまく活用すれば、今やお金を生み出すことも可能な時代となっている。

では、このような時間資本主義の時代において、どのような職業人が存在するのだろうか?本書には「時間とお金の人材マトリクス」として紹介されている。

時間とお金の人材のマトリクス

時間資本主義時代の勝ち組は「クリエイティブ・クラス」だ。「クリエイティブ・クラス」という概念は、トロント大学の経済学者・社会科学者であるリチャード・フロリダ氏が提唱した概念であり、アメリカの主要都市が脱工業化した過程において経済成長の推進力となったグループとして定義している。同氏は、科学・工業・コンピュータ・芸術・デザイン・メディアなどに従事する人を「スーパー・クリエイティブ・クラス」と、健康管理・金融・法律・教育に従事する人を「クリエイティブ・プロフェッショナルズ」と分類し、これら「クリエイティブ・クラス」が増えることで経済を牽引すると説いている。

本書では、これからの経済を牽引する人を右上に属すると考え、「クリエイティブ・クラス」として分類している。彼ら「クリエイティブ・クラス」は既存ルールで競争する気は全くない。「すきま時間」を活用しながら自らのアイデアで時間価値を高め、未来を切り開こうと考えている。

その一方で、時間に追われる人は新しいアイデアを考える余裕もなくなり、「すきま時間」を活かす余裕もなくなる。そして、なおさら自らの労働時間の投入でしか稼ぐしかない不利な状況に追い込まれる可能性がある。
このように「時間の使い方」により「時間価値」が変わり、「時間価値」の違いにより収入に大きな差が生まれる可能性がある。しかし、「時間価値」を高めるにあたり、単に「短縮時間価値」(時間の効率化)のみを考えるのではなく、「創造時間価値」(時間の快適化)を考える必要がある。それは、「東京ディズニーランド」や寝台列車の「カシオペア」や「ななつ星」が人気であることからも明らかだ。

「時間をいかに使うか?」というテーマは、個々人にとって、これからますます大きなテーマとなる。そのポイントは「創造時間価値をいかに生み出すか?」だ。本書は、限りある時間の使い方を考えるにあたり、有益な本となるはずだ。

本書のポイント


・情報通信技術の進展につれて人々の働き方が変化し、「すきま時間」の価値が急速に高まってきた。

・商品やサービスの価格には、消費者が享受する「時間価値」が含まれるようになる。

・商品価値には「節約時間価値」と「創造時間価値」の2つがある。

・「すきま時間」と携帯可能な情報端末の組み合わせでさまざまな時空ビジネスが生まれる。

・消費は、商品やサービスの選択時間を快適化ないしは効率化するという方向に二極化していく。

・時間資本主義の勝ち組は、時間リッチのクリエイティブ・クラス。

・時間価値の低い人は、クリエイティブで時間価値の高い人に奴隷させられる。

・公の時間を巧みに私の時間として使える人ほど有利になる。

・ソーシャルメディアと携帯情報端末による「拡張現実」が時間価値をさらに高める。

・効率化にとらわれず、自分なりの時間快適化を目指すことが幸福につながる。


関連書籍




目次

 いま、なぜ「時間資本主義」なのか?
 第1部 時間資本主義の到来
 第2部 時間にまつわるビジネスの諸相
 第3部 あなたの時間価値は、どのように決まるのか
 第4部 時間価値を高めるために-場所・時間・未来
 結局のところ、時間資本主義とはいかなる時代なのか
 あとがき
 参考文献
 
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現在、『運を呼び込む 神様ごはん』の書評を準備中です。それでは、次回もお楽しみ!


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