書評


1984年、アメリカで一冊の本が発売された。『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』である。著者のエリヤフ・ゴールドラット氏は物理学者から経営コンサルタントになった異色の経歴の持ち主だ。同書は、革新的な内容に加え、著者の異色の経歴も話題となり、1000万部を超える大ベストセラーとなった。

そんな同書がコミックとして帰ってきた。それが『 ザ・ゴール コミック版 』である。本書は神奈川県のとある赤字に苦しむ工場を舞台とし、主人公である工場長の新城吾郎が大学時代の恩師であるイスラエル人の物理学者で現在は世界的な経営コンサルタントであるジョナのアドバイスを受けながら、工場を立て直すというストーリーとなっている。

それにしても、面白い内容の本だ。昔、原作である『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』も読んだことがあるが、当時は書いてあった内容を理解できず、いまいちピンとこなかった記憶がある。だが今回はマンガ仕立てとなっていることもあり、かつ核心の「TOC制約理論」に至るまでのストーリーが分かりやすくなっている。

とこるで、本書に書かれた以下のジョナの言葉は、生産管理などをやったことがある人間にとって、一瞬、「どういうこと?」と思うかもしれない。実は、以下の言葉のナゾを解くことが、本書を読み解くカギとなっている。


例えば、最初の言葉である
「従業員が手を休めることなく常に作業している工場は非常に非効率なんだ」
に対しては「逆じゃないの?」と思うのが一般的であろう。通常は高い稼働率を保つことが良しとされている。手を休める人間がいれば、モノの生産が行われていないのに、給料だけは支払われる状態となってしまう。確かに、これは誰もが望まない状態だろう。

だか、現実には、いくつかの工程、つまり「つながり」を経て製品は完成する。そして、各工程には生産能力にバラツキがあり、どこかに生産能力が低い箇所、つまり「ボトルネック」が必ず存在する。「つながり」と「ボトルネック」を無視し、工場が手を休めずに製品を作り続けたらどうなるか?「ボトルネック」の前にどんどん仕事が溜まり、コストがかさむ結果となる。かえって「非効率」となるのだ。

また、
バランスのとれた工場に近づけば近づくほど工場は倒産に近づく」
という言葉に対しても「?」となる方が多いと思う。「バランスのとれた工場」とは、「市場の需要に合わせて生産を行う工場」を指す。一見、理想にも見えるが、現実には、この理想は存在しない。なぜなら、「市場の需要にバラツキがある」と同時に「工場の生産能力にもバラツキがある」からだ。そして、需要に生産を合わせようとすればするほど、つながりに「ゆとり」がなくなり、ちょっとした変化に、つながりは全体としてダメージを受けるようになる。そして、生産を縮小しようとすると確かに生産は減るが、 各工程の「バラツキ」のために途中の部品の在庫は増える結果となる。

では、どうすればよいのか?その答えが次の吾朗の言葉に表れている。

最後に解説の岸本裕司さんが紹介した原作のエリヤフ・ゴールドラット氏の言葉が印象に残ったので紹介したい

これは、エリヤフ・ゴールドラット氏の信念とされる言葉である。ゴールドラット氏は自分たちで考え、答えを見つけることこそが最高の学びの方法だと信じていた。そのため、本書のストーリーも、ジョナが吾郎たち質問を浴びせながら自分たちで考えさせ、答えを見出す形となっている。本書の最大のメッセージは、TOC制約理論もさることながら、実は、先のゴールドラット氏の言葉ではないかと思えてならない。そのように思えるほど、先のゴールドラット氏の言葉がストーリーに体現された本である。



本書のポイント


・どんな会社でも目標はひとつしかない。目標は"お金を儲けること"。

・倒産の多くはキャッシュフローが原因。キャッシュが足りなくなれば会社は終わり。

・"純利益"、"投資収益率"、"キャッシュフロー"の3つを同時に増やすことが大事。

・新しい3つの指標
 ①スループット:販売を通じてお金を作り出す割合
 ②在庫:販売しようとする物を購入するために投資したすべてのお金
 ③業務費用:在庫をスループットに変えるために費やすお金

・"依存的事実"と"統計的変動"がある限り、バランスのとれた工場に近づけば近づくほど工場は倒産に近づく。

・システムの全体最適を目指すためには最初に"ボトルネック"と"非ボトルネック"を見極める。
 ①ボトルネック:処理能力が与えられた仕事と同じかそれ以下のリソース
 ②非ボトルネック:
処理能力が与えられた仕事より大きいリソース

・"5つの集中ステップ"を繰り返すことでスループットを向上させることができる。
 ①制約を見つける
 ②制約をどう徹底活用するかを決める
 ③他のすべてをステップ2の決定に従わせる
 ④制約の能力を高める
 ⑤これまでのステップで制約が解消したらステップ1に戻る

・TOC制約理論:制約に集中すれば全体最適になる。


関連書籍



目次

 第1章 工場閉鎖の危機
 第2章 会社の目標とは
 第3章 「理想的工場」の幻想
 第4章 久々の休日
 第5章 窮余の一策
 第6章 「瓶の首」を探せ
 第7章 子どもたちのヒント
 第8章 1本の鎖と全体最適
 解説 岸本裕司
 
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