環境が著しく変化する中で、いかに収益を安定的に得られる仕組みをつくるか?
経営者にとって、「収益の安定化」が大きな経営課題となっています。
特に先行き不透明な現代においてはなおさらのことです。
そのため、昨今、安定的な収益をもたらすストックビジネスが注目されております。
そんな中、最近、ストックビジネスに関する教科書とも言える本が登場しました。今回紹介する『ストックビジネスの教科書』(大竹啓裕著)です。
著者の大竹啓裕さんは貸し会議室などを営む株式会社アットオフィスの社長。ストックビジネスが注目されるに伴い、今、注目を集めている経営者の一人です。
著者が語るストックビジネスとはどのようなものか?そのエッセンスを以下に紹介します。

ストックビジネスとは?
ビジネスとは何か?さまざまな定義がありますが、本書では、ビジネスを以下のように定義しております。
ビジネスとは「連続的に利益を生み出す活動」ということになります。
売上(収益ともいう)から原価を引いたものを粗利益といいますが、本書ではこれを連続して生み出していくことをビジネスとします。
一度きりのもの、たとえば町内会で一度きりの模擬店を出したというケースは、ここではビジネスとはみなしません。
(大竹啓裕著『ストックビジネスの教科書』 より P46)
ビジネスには大別して、「フロービジネス」と「ストックビジネス」があります。
フロービジネスは、都度、お客様との関係を築き、その時々に応じて収益を上げるビジネスです。基本的に「1回の売買で取引は終了」というものです。分かりやすいのは、スーパーなどの小売業でしょう。
中には土地や建物のように1回当たりの取引金額が大きいものもありますが、ビジネスを継続するためには「都度、お客様を探し、取引を行う」必要があります。それゆえに、「収益の予測が難しい」という側面があります。
「当たると大きいが、外れると"自家ブラック化"になりやすい」がフロービジネスの特徴です。
一方のストックビジネスですが、本書では以下のように定義しております。
1.継続的にお金が入る
2.売ることができる
その代表的な例は、賃貸マンションやアパートなどの不動産業です。
ストックビジネスの場合、契約が継続している限り、「月々(もしくは毎年)一定の金額が入る」のが特徴です。
もちろん、収益となるためには、採算ラインを超えるお客様の数が必要です。しかし、採算ラインを超えると、月々、一定の金額が収益としてもたらされます。このため、フロービジネスとは違い、先々の予測が立てやすくなります。
著者もストックビジネスの魅力を本書で以下のように書いております。
「雪だるま式に売り上げと利益が伸びていく」、それこそがストックビジネスの本質です。
(大竹啓裕著『ストックビジネスの教科書』 より P16)
世の中には「ストック性の高いビジネス」が溢れている
ストックビジネスを捉える上で「おもしろいなあ」と思ったのが、本書で紹介されているウォーレン・バフェット氏の言葉です。
「インターネットがいくら発達しても、大人の男は毎日ヒゲを剃る。それが私の求めるビジネスだ」
(大竹啓裕著『ストックビジネスの教科書』 より P64)
この言葉こそが、ストックビジネスを端的に表しております。
「ヒゲを剃る」のは、大人の男性にとっては欠かせない日常の行為です。カミソリは、男性にとっては必需品です。しかし、ヒゲをそっていくうちに、刃は劣化し、交換が必要となります。つまり、男性にとっては「交換用の刃を一生買い続けなければならない」となります。
そのため、企業にとっては、一度カミソリを購入してもらえれば、その後、交換用の刃をずっと買ってもらえるわけですから、「カミソリを安い価格で販売する」、もしくは「タダで配ると」いう戦略をとるわけです。
そして、身の周りを見回してみると、コピー機、プリンタ、キャリアの通信料金、銀行ローン、英会話教室、そしてEvernoteなどのアプリケーションの課金など、世の中にはストック性の高いビジネスに溢れております。
常に「需要超過」に立ち位置を定める!
ストックビジネスを考える上で、「どこに立ち位置を定めるか?」は重要なポイントとなります。本書では、以下のように述べております。
重要なのは、常に「需要超過」に立ち位置を定めることです。
「需要超過」とは、供給が追いつかないほどに需要がある状況で、ビジネスをやる側としてはもっとも望ましい状況です。
(中略)
ビジネスの要諦は、流れや風向きに逆らわずに、いかに「需要」が伸びる業界に立ち位置を定めるかにあると思います。「需要」が伸びる業界に立ち位置を定めるためには、長期的な視野に立ち、物事を判断する必要になります。
そのためには、あなたがビジネスをしようとする業界は、5年後にどんな状態にあるのかを常に意識し、アンテナを張って状況を見定める必要があります。
(大竹啓裕著『ストックビジネスの教科書』 より P116~P117)
本を読んだら街に出よう!
著者の大竹啓裕さんは以下ののように述べております。
私には、ずいぶん前から習慣にしていることがあります。それは、電車に乗ったときに、必ず車内広告に目を通すことです。
それは、漠然と目を通すわけではありません。広告のほとんどは、何らかのビジネスが絡んでいます。そのビジネスに「ストック性」からあるかどうかを意識的にみるようにしているのです。
(大竹啓裕著『 ストックビジネスの教科書』 より P68)
街には考えるヒントがあふれています。
例えばこれ↓
注目してほしいのは「スタバのマーク」......ではありません。
実はこれは電車のドアの上部にあるデジタルサイネージです。
吊革広告は鉄道会社にとっては大きな収益源の一つです。しかし、吊革広告の枠の上限は決まっている。鉄道会社が今まで以上の収益を上げるためには、「今まで以上の広告の枠を増やす」必要があります。
デジタルサイネージは、「今まで以上の広告の枠を増やす」ためのツールとなります。
なぜなら、広告として配信する動画をサーバーに格納するだけで、たくさんの電車に多くの広告を流すことができるわけですから?
本書にも多くの事例が掲載されております。また、解説が書かれているのでビジネスのポイントが分かります。
しかし、身の回りを眺めながら、「この商品のキャッシュポイントはどこにあるんだろう?」と考えることで、本書の言う「ストック思考」が鍛えられます。
そして、それこそが本書を実際に活用することになると同時に、その蓄積こそが、新しいアイデアやひらめきにつながっていくはずです。
最後に
非常に面白い本でした。
また、記載内容のポイントが明確で、焦点がハッキリとしていたため、非常に読みやすい!そのため、頭にスッと入ってくる。
しかし、それでいて、記載内容は充実している!
やはり、面白いビジネス書というのは、「読みやすいが、内容は充実している!」というのが必須条件です。
本書はかなりレベルの高いビジネス書となっております。これは著者の努力はもちろん、ライター、そして編集者の努力の賜物だと思います。
ストックビジネスについて、かなり充実した内容で書かれているので、「お得感いっぱい」の本です。
(あとがき)
本書を買ったときのことを少し書きます。
池袋にある天狼院書店というと、コタツが置いてある書店ということでテレビで紹介されたりなど、知っている方も多いと思います。イベントの訪問記など、このブログでも何度か紹介をさせていただきした。
・【イベント】HDRの魔法はやはり凄かった!(石川真弓さん1日店長@天狼院書店)
本書を買いに天狼院書店に行くと、なんと、そこに著者の大竹啓裕さんがいたのです。お願いをして、一枚パチリ!

サインもいただきました。

本書のポイント
街にはビジネスのヒントが溢れている!街を眺めながら「ストック思考」を鍛えよう!
関連書籍
目次
第1講 「ストックビジネス」とは何か?
第2講 ストックビジネスへの道
第3講 ストックビジネスの収益構造を理解する~「収益ユニット」を極める~
第4講 ストックビジネスを極める=「チューニング」が9割~
おわりに 今日からストックビジネスを始めよう
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