2016年となり2週間過ぎましたが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか?
さて、2016年最初の書評は『脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!』(ベネディクト・キャリー著)です。
以前、『【気になる本】ビジネスから実用書まで!年末年始に読みたいビジネス書5冊!』でも紹介した通り、本書を年末年始のお休みにかけて読んだのですが、なかなか書評を書く時間がなく、現在となってしまいました......(^^;
それにしても面白い本でした。
本書は最新の脳科学にもとづき、もっとも効率のいい最新の記憶法・勉強法を徹底解明した内容の本ですが、読んでいくうちに驚きの連続となりました!
それでは、本書のエッセンスを以下にまとめましたので、ご覧ください。
目次
- 勉強場所を決めると効率が下がる?
- 「分散学習」は一夜漬けに勝る!
- 最大のテスト対策は「自分で自分をテストする」!
- 最後に
勉強場所を決めると効率が下がる?
巷の勉強法でよく言われているのが「静かな場所を見つけて自分の勉強場所にする」というアドバイスです。
雑音がない方が集中できるし、同じ場所で勉強することで脳に「勉強するぞ!」と知らせることができると思われます。
ところが、本書では「勉強の場所も変えた方が学習効果が高まる」と述べております。
テストの点数には著しい差が現れた。2回とも同じ部屋で勉強したグループは、40単語のうち平均16個思い出した。勉強する部屋が変わった学生は、平均24個思い出した。単純に勉強する場所を変えただけで、思い出す数が40パーセント以上増えた。論文の言葉を借りるなら、この実験によって、「被験者を取り巻く環境の変化に伴い、思い出す力に大きな改善が見られることが明らかになった」のだ。
勉強する部屋を変えたほうが、同じ部屋で勉強するよりも思い出したくなるのはなぜか?その理由は誰にもわからない。一つの可能性としては、最初の部屋で勉強したときに単語が付随する情報と、それとは若干異なる別の部屋で覚えたときに付随する情報が、脳内で別々に記憶されていることが考えられる。この2種類の情報には重なる部分があるが、情報は多いほうがいい。あるいは、2種類の部屋で覚えることで、勉強した単語、勉強中に目や耳に入った事実、勉強中に思い出す手がかりの数が2倍になるのかもしれない。
(ベネディクト・キャリー著『脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実! 』 より P91~92)
「分散学習」は一夜漬けに勝る!
学生時代、試験勉強では"一夜漬け"をよくやったものです。
「明日は試験!とにかく一夜漬けで勉強すれば、多少はマシではないか?」、そんなことを思いながら勉強したものです。
しかし、一夜漬けは結局は「詰め込むだけ詰め込む」という勉強法。詰め込みすぎると結局はすべて落ちてしまいます。
むしろ、間隔をあけて勉強するほうが、脳への定着が高まります。
本書は「昔お話しをしていた母親のアドバイス」を例に、「分散学習の効果」を述べております。
「ねえ、一度に全部勉強するより、今晩少し勉強して明日もまた少し勉強する、というふうにした方がいいんじゃない?」
このテクニックは、分散学習や分散効果と呼ばれている。一気に集中して勉強するのと、勉強時間を「分散」するのとでは、覚える量は同じでも、脳にとどまる時間がずっと長くなるのだ。母親のアドバイスは正しい。今日少し勉強し、明日また少し勉強した方が、一度に全部するよりいい。そのほうがはるかにいい。場合によっては後から思い出す量が2倍になることもある。
詰め込みは無意味だと言いたいのではない。徹夜で勉強することの効果は、翌日の試験の点数が向上するという記録が昔からあるので実証ずみだ。ただし、徹夜のラストスパートの信頼性については、荷物を詰め込みすぎた安物のスーツケースみたいなところがある。入りはするが、しばらくするとすべて落ちてしまう。
(ベネディクト・キャリー著『脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実! 』 より P97)
最大のテスト対策は「自分で自分をテストする」!
本書はカービックとローディガーという2人の心理学者の実験から、「最大のテスト対策は、自分で自分をテストすることだ」と述べております。
そのことについて述べた箇所を以下に記載いたします。
カービックとローディガーは学生を3グループに分け、グループ1の学生にはそれぞれの学習時間の5分後、グループ2には学習時間の2日後、グループ3には学習時間の1週間後に確認テストを実施した。結果は次ページのグラフのように一目瞭然だ。
この実験では特筆すべきことが二つある。一つは、カービックとローディガーは確認テストにかける勉強時間を平等にしたこと。両方の文章を勉強する時間は、どの学生も等しく同じだった。
もう一つは、1週間後の確認テストという大事なテストで、「自己テスト」が「勉強」を上回ったことだ。つまり、同じ準備でも、テストと勉強はイコールではないということだ。実際、自分で自分をテストすることのほうが勉強よりも効果が高い。それも、本番までの時間が長ければ長いほど、その差は顕著になる。
(ベネディクト・キャリー著『脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実! 』 より P97)
例えば「単語カード」など、これは思い当たるものがあるのではないでしょうか?
単語カードを使って自分でテストを行い、間違って答えたとき、間違った問題の答えを意外としっかりと覚えているものです。そして、しばらく間隔をあけてテストを行ったとしても、脳にその問題をはっきりと覚えていることが多いものです。
最後に
本書は300ページ以上のボリュームがある本ですが、すんなりと読むことができました。
それにしても、「決まった場所で勉強するよりも、場所を変えて勉強するのがよい」「一つのことだけを反復して勉強するよりも、関連性のあることを織り交ぜて勉強するほうが学習効果が高い」など、今まで"常識と思われていたことが、実は間違いだった"ということが多いものだと、本書を読んでびっくりしました。
でも、言われてみると、確かに「反復よりは関連性のあることを織り交ぜたほうが、効果的に勉強できていた」という実感があります。
それ以外にも、本書には「ひらめきを生む」「創造性を高める」といった内容がPart3に、「五感」や「睡眠」が学習に与える影響についてがPart4にかなり詳しく書かれており、かなり内容の濃い本です。
「学習効果を高めたい」と思う方にとっては、非常に価値の高い本です。
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